前回までは睡眠とてんかん発作の関係について述べてきた。睡眠不足はてんかん発作を誘発しやすいこと(平成27年1月号)、寝ぼけとよく似たてんかん発作があること(平成27年2月号)、睡眠時異常行動症(平成27年3月号)、ムズムズ足症候群(平成27年4月号)、金縛り現象(平成27年5月号)など、いずれも睡眠と密接な関係ある発作症状について症例を上げて説明してきた。
今回は話題を変えて、てんかんと年齢について考えてみる。てんかん発作はどの年齢でも起こりうるが、最近話題になっている高齢者初発てんかんについてここで述べる。
高齢になって初めて、てんかん発作を起こす高齢者初発てんかんは、近年増加が著しい。日本のように高齢者の人口が増えつつある国では、年齢に高まるにつれ、てんかん発症率も高くなっている。その原因として加齢に伴って様々な中神経系の病態があげられよう。脳血管障害、頭部外傷、アルツハイマー病、脳腫瘍、薬剤性疾患、代謝性疾患、虚血性脳症などの増加が考えられる。しかし多くの場合、原因不明であるのも事実である。
この図(H.Hauser、1997)はアメリカ、アイスランド、フィンランド、スエーデン、イタリアの比較的発達した国で得られた、新たに発症したてんかん患者の数(人口10万あたり)を年齢順に示している。てんかんは若年発症、特に生後数か月で生ずる例が多く、生後1年を過ぎるとこの出現率は急に減少し、その後幼児期、思春期、青年期と減少を続ける。青年期に最も少なくなるが、65歳を過ぎたころから再び増加し、70歳をすぎると若年発症率を超え、80歳を過ぎると乳幼児の発現頻度を超え、最大の発症率を示す。この図でわかるように高齢初発てんかんは今や見過ごせない大きな問題になっている。
「成人期てんかんの特色」大沼 悌一
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