日本てんかん学会は成人てんかんの治療に関してガイドラインを発表した。成人てんかんを扱う治療者は次のようなことを念頭において治療してほしいという願いが込められてはいるが、現実は複雑で必ずしもその通りになるとは限らない場合も多い。ここでは上記ガイドラインの要点をまとめてみよう。
1. 初発のてんかん発作は必ずしもすぐに治療しなければならないとは限らない。2回目の発作が起こってからでも治遅くない場合が多い。なぜなら偶発的な発作というものがあり、2回目の発作を起こす確率は50%にすぎないからである。初めての発作であっても、脳波・発作の背景にある脳の病態を詳しく検査する必要がある。
2. 薬物は単剤より始め2―3種類を試し、それでも奏功しない場合は多剤併用治療を行う。
3. 2―3種類の抗てんかん薬の単剤治療で抑えられない時は外科治療も考慮されうる。
4. 抗てんかん薬の使いかたはそれぞれのてんかん症候群で異なるので、それぞれについて選択的に使う。
・全般てんかんに対してはバルプロ酸が第1選択薬として推奨される。第2選択薬として欠神発作にはエトスクシマイド、ミオクロニー発作にはクロナゼパム、大発作にはフェノバルビタールが推奨される。クロバザム、フェニトインも候補となりうる。
・症候性全般てんかんでは、クロナゼパム、ゾニサミドなども考慮される。
・部分てんかんに対して、カルバマゼピンが第1選択薬として推奨される。第2選択薬としてはフェニトイン、ゾニサミドがあり、バルプロ酸も候補となる。
・抗てんかん薬の副作用、相互作用、抗てんかん薬による発作の悪化がありうる。
5. 単剤での薬物治療に際しては、最高耐容量まで十分に使用して効果を確かめる。
6. 薬物の選択に当たっては、年齢、性別、薬物過敏性・代謝の個人差、合併症を考慮に入れる。
7. 治療と並行して合併症に対する治療、リハビリテーション治療や生活の質を高めるサービスを提供する必要がある。
最近発売されたガバペン、トピナ、ラモトリギン、イーケプラ等の新薬は上記の内容を大きく変えるかもしれない。
「成人期てんかんの特色」大沼 悌一
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