ラミクタールは昨年日本においてようやく発売された新規抗てんかん薬で、部分てんかん及び全般てんかんにおいて高く評価されており、難治性のレノックス・ガストー症候群にも有効である。催奇形性のリスクも少なく大変ありがたい薬剤である。
しかし副作用にも厳しいものがある。中でも怖いのは急激に出現する発疹である。速やかに全身に広がり、発熱、肝障害などを伴い重篤になりやすい。これが出れば直ちに中止しなければならない。私が最初使った患者でこの症状が出たので、その後この薬剤の使用についてはきわめて慎重にならざるを得なかった。
またこの薬は行動を活発化することがある。これまでの抗てんかん薬は量が多くなると行動が鈍く動作・思考も緩慢になりやすいが、この薬剤は逆である。活発になり気分が高揚気味になることがある。これはむしろ歓迎すべき点であるかもしれないが、度が過ぎると困ることもある。症例を示そう。
症例1.
現在15歳の女児。生来知的障害があった。2歳頃より次のような発作が頻回に出現するようになった。すなわち(1) 急に力が抜けて前方にゆっくり傾く発作、(2) さらに前方に倒れる硬直する強い発作が毎日10回以上見られるようになった。時にこの発作が間断なく連続して1-2時間も続くこともあった。脳波は全般性の2-2.5Hzの棘・徐波複合が頻回に見られ、典型的なレンノックス症候群(症候性全般てんかん)と診断された。
このタイプの発作は最も難治であり、デパケン、エクセグラン、フェノバール、テグレトール、マイスタン、リボトリール、ガバペンなど使用したがすべて無効であった。これにラミクタールを少量よりはじめ100mgまで増やしたところ発作が激減した。従来1日何10回とあった発作が2-3回と減少した。意識が途絶えることが少なくなったせいか動きが活発、スムーズになり、食事中箸やフォークを落とすことが多かったが、それもなくなった。ふらつきも改善し、しっかりと歩けるようになった。
症例2.
現在30歳台の男性。生来知的障害あり養護学校卒業した。1才のころより点頭てんかん(ウエスト症候群)が発症し、その後レンノックス症候群となった。急に膝の力が抜け腰砕けとなる脱力発作と両手を挙上させ体を硬くして倒れる強直発作が毎日頻回に出現した。最も難治なてんかん症候群(症候性全般てんかん)である。てんかん専門病院に入院治療を繰り返したが改善しなかった。
ラミクタール150mg使用したところ、発作が半分に減少し、かつ発作そのものが弱くなった。大きな変化が見られたのは行動面にあった。元気になり反応が良くなった。ゲラゲラ声をだして笑い表情が豊かになった。今までは体が重く、ボーッとして反応が遅かったが今は手を差し伸べると自分から立ち上がろうとするなど意欲が見られるようになった。
このラミクタールは精神面でも従来の抗てんかん薬にはない好ましい作用があり、てんかん患者の福恩になるだろうと思われる。
「成人期てんかんの特色」大沼 悌一
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