167 運転免許と心因性非てんかん性発作(PNES)(2018年2月号)――てんかん専門医師をも悩ませる問題――

てんかん発作ではないが、ストレスなどの心理的負担がおおきくて、意識を失う発作がある。このような発作を心因性非てんかん性発作(PNES)と呼ぶ。昔「偽発作」と呼ばれたが、この発作も精神疾患であり、「偽物」という言葉がよくないので今はこの用語は廃語となった。これについては94.てんかん最前線:心因性非てんかん性発作(いわゆる偽発作)に関する診断・治療ガイドライン –日本てんかん学会編– (2011年1月号)ですでにのべた。

この発作はてんかんを持つ人でも、またてんかんを持たない人でも起こりうる。生まれて初めての発作がこれであることもある。悩ましいのはこの発作が自動車の運転免許とかかわってきたときのことである。

 例を示そう
30歳台の青年が、ある日会社の車を整備中に突然話ができなくなり、意識を失い倒れた。周りの人に寝かせられ、気が付いたら病院だった。病院でも再び発作を起こしたという。けいれんもあったらしい。てんかんということで抗てんかん薬が処方された。その後、心因性非てんかん性発作(PNES)と思われる発作が出るようになった。意識は失われていないが、長時間にわたって体のあちこちが勝手にしびれたり、けいれんを起こすようになった。抗てんかん薬が増えたが発作は治まらない。自動車の運転免許証は一時預かりとなった。患者は発作の誘因として仕事上でも私的でも強いストレスの下にあり、てんかんという診断には強い疑問を持っていた。なお脳波、MRIでも異常はなかった。

 症例2 60歳台男
2年前に左肩痛くなり横にさせてもらい、30分ほど意識を失った。呼ばれて気づいた。1年後同様な発作がありベンチに座ったのは覚えているが、40分ほど意識を失った。1か月後車を運転している時に同じ発作が起こり、コンビニで休んでいたらそのまま意識を失った。気が付いたら車に坐っていた。脳波正常、MRI正常 しかしてんかんということで運転免許証は一時預かりとなった。

 上記2症例はてんかんという診断に疑問があり、てんかんでないという旨、診断してほしいと外来を訪れた。お話をよく聞くと確かにPNESに当てはまる症状ではあるが、完全にてんかんを否定することも難しいとご返事しました。

1. てんかんと診断することはできても、てんかんでないと診断することは難しい。またそれには時間がかかる。すべての発作を丹念に観察してそれがてんかんとして理にあわないことを証明しなければならないからである。

2. てんかん患者が車を運転していけない条件の一つに発作以外にも、安全な運転をするのに支障となる症状、たとえば過去5年間に意識を失ったことがある、身体が一時的に動かなくなったことがある、日中眠り込んでしまうことが頻回にあるなど医師が運転に支障があると判断した場合もあることを見逃してはいけない。

「成人期てんかんの特色」大沼 悌一

(この記事は波の会東京都支部のご許可を得て掲載しているものです。無断転載はお断りいたします。)

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