185 あなたはコロナワクチン接種しますか、しませんか? (2021年5月号)

新型コロナ第4波が今、再び勢いを増してきている。緊急事態宣言がどうにか解除されたが、感染拡大を避けるため、人との接触「3密」を避けるように厳しく指導されている。しかし一方積極的に対コロナ作戦で重要な一歩、対コロナワクチンの接種が始まろうとしている。

しかしコロナワクチンが本当に大丈夫か、アナフラキシーなどの重大な副作用、あるいは接種後に死亡した人も報告されており、私が聞いた人の4人に1人は心配で接種を躊躇している。ファイザー製薬の報告によると世界で8万人がワクチンの治験に参加して、そのうち33人が死亡した。これらの死亡は「既存の疾患の進行が原因で、体力が持たなかった」とし、ワクチンとの因果関係はないと結論付けている。しかし使用上の注意として、既存に重篤な疾患を持つものを「接種要注意者」として、ワクチン接種は慎重に「個人の同意を得てから行うべき」であるとした。厚生省は、これを受けて、「接種要注意者」を次のように定義した。(1)本剤に対してアレルギーを持つもの、(2)過去に予防接種で2日以内に発熱があったもの、(3)過去にけいれんがあったものなど。

私は(3)の説明には、ちょっと疑問をもった。「過去にけいれんがあったもの」の中には既存のてんかん患者の大部分が入り、てんかん患者はすべて「接種要注意者」になり、これはおかしいとおもった。

コロナワクチン予防接種で、てんかん発作が悪化するというデータは今のところない。またコロナにかかったとしても持病の発作が悪化したという報告もない(2021.04.0米国てんかん学会ニュ-スレター)

一方、第43回予防接種基本方針部会(令和2.12.25)の答申を受け、厚生省は、予防接種の優先順位を決め、体調が悪い人、基礎疾患を持っている人は、優先的に早めにコロナワクチンを接種した方がいいと結論付けた。その対象者は(1)基礎疾患を有する方(呼吸器、心臓病、腎疾患、肝疾患、糖尿病、血液疾患)など、(2)重い精神疾患(認知症、統合失調症、気分障害、てんかん)とした。ここで「てんかん患者」が予防接種の優先順位が高いとして位置づけられており、これは喜ばしいことであると思った。

ワクチン接種でいかに人々が助かってきたか。過去の歴史を紐解いてみよう。エジプトのミイラから天然痘に感染した痕が確認されていることから、人類が発生して以来、伝染病との戦いが始まった。紀元前1000年頃には、インドで人痘接種法(人痘法)が実践され、天然痘患者の膿を健康人に接種し、軽度の発症を起こさせて「免疫」を得る方法が行なわれていた。イギリスの医師エドワード・ジェンナーは、牛痘ワクチンを人間の天然痘に対する免疫生成に利用してワクチンを作った。これにて天然痘は根絶し、WHO は天然痘の世界根絶宣言した(1980.5)。また中世ヨーロッパではペスト病で人口の3分の1が死亡した。1918年のインフルエンザ汎流行(スペイン風邪パンデミック)では世界中で5億人が感染し、死者は2000万とも4000万人ともいわれた。これらはワクチン生成によってほぼ根絶された。このようにワクチンはこの種の疾患治療の最後の砦であり、全員が接種することを期待する。

最後に仮に予防接種により重大な疾患が発生した時には、予防接種健康被害救済制度が受けられることを追加しよう。ワクチンはパンデミック(世界的大流行)の最後の砦となる。

花の画像

「成人期てんかんの特色」大沼 悌一

(この記事は波の会東京都支部のご許可を得て掲載しているものです。無断転載はお断りいたします。)

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