184 災害とてんかん医療(2021年3月号)

最近大きな災害が立て続けに起こっている。今はコロナ、ちょっと前までは大雨・大洪水や土砂崩れ、三陸沖地震と津波など自然災害があり、また原発事故などの人為的災害もあり、人類の将来が危ぶまれるほどである。つい先日は北陸、特に新潟の大雪は記憶にあたらしい。私は昔新潟の上越にある「さいがた病院」に院長として勤務したことがあったが、冬には一日で1メートルを超える積雪は珍しくなく、一夜にして車が雪に埋まって動けなくなったことがあった。しかし今年は別格で一日3メートルを超える積雪があり、関越高速自動車道路がまひした。こんなのは過去にはなかったことである。災害で困るのはまずは障碍者であり、特にてんかんを持つ人では薬が手に入らなくなると発作重積の可能性があり危険である。

災害といえば私はまず阪神淡路大震災を思い出す。1995年(平成7年)1月17日に発生した兵庫県南部地震により発生した災害である。 震災後すぐに厚生省の声掛けで、全国の国立精神療養所が緊急援助体制を敷いた。私は当時国立精神・神経センター病院の外来部長を拝命していたので、私が団長として、精神医療団を結成し、国立明石病院を宿舎として2週間ほど現地で避難者の診察に当たったことがあった。小学校体育館は、避難者で満員だったが、毎日1人1人に声をかけ体調をきいてまわった。みんな静かで重苦しい雰囲気であった。中にはてんかんの患者も混じっていたが、不思議に発作を起こす人は少なかった。しかしかかりつけの病院が倒壊し、薬が手に入らない患者さんもいるので、まもなく日本てんかん協会が薬の提供に努力してくれて助かった。

コロナ災害に話を戻そう。第1波、第2波、ついに第3波が来て国内感染者394,090名、死者5,952例となったそうだ(2月3日現在)。ついに非常事態宣言が敷かれ、不要不急の外出をしないように、また飲食店は夜8時で閉店するなどがきまった。そして非常事態宣言は1か月延長になった。しかし政府要人は夜おそくまで多人数で飲食して、約束を守らなかったのが新聞テレビで放送された。私はそれを聞いて笑った。人には注意するが、自分では守らないのは人間の本性だと思った。

コロナは集団発生(クラスター)を引き起こし、大病院や老人施設が巻き込まれた。東京近郊にある私どものクリニックの近くまで、コロナの波はひたひたと押し寄せてきているのがわかる。しかし外来診療のみのクリニックでの集団感染はいままのところ報告がないとのテレビ放送があり安心してよい。てんかん患者さんは持病があり、薬をやめることはできないので頑張って通院してくれている。最近では「電話診療」が許可されたので、全体の3分の1程度の患者さんが、電話での診察にきりかわった。スマホやPCやホームページでも受け付けており、「電話診療」の結果、処方箋を直接かかりつけ薬局やあるいは本人に送る。そのため院内の電話は鳴り止まらず、医師は全員返信用にのみ使える携帯電話を常時持たされている。

コロナ流行はいつまで続くのであろうか。私は予防接種が全体にいきわたれば、収束すると思っている。予防接種は安全で、ただ一つの解決策であるので、怖がらずに全員受けてほしい。詳しくは当院のホームページ参照

花びらのイメージ

「成人期てんかんの特色」大沼 悌一

(この記事は波の会東京都支部のご許可を得て掲載しているものです。無断転載はお断りいたします。)

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