前回はてんかんと障害について話しました。障害にも発作に直接関連する障害、てんかんに随伴する知的障害、手足の不器用などの身体障害、引っ込み思案や円滑な人間関係が作れない、いわば社会性に関する障害などさまざまな側面があることを書きました。今回はてんかん患者の病名告知の問題について考えてみましょう。
成人になると進学、就職、結婚などがあり、その際てんかんという病名を隠すかどうかは大いに悩む。明らかに知的障害があり、あるいは明らかな身体障害などがある場合は病気を隠すのは無理である。同じくてんかんでも発作がほとんど毎日起こるような場合はやはり、病気を隠すのは無理である。見たところ正常で普通の人のように見えるが、時々発作を起こすような例で、この病名を隠さずに言ったほうがよいのか、あるいは最後まで隠し通したほうが良いのか問題となる。
病名告知はどんな時に問題となろうか。
1.中学校、高校やさらに大学に進学するとき、
2.新しい友人を紹介されたとき、
3.隣近所のお付き合いに際して、
4.就職するとき、
5.見合いするとき、
6.保険に加入するとき、
などなど数え上げればきりがないくらい多い。
病名を正直に話しておくと、それなりに色々な場面で無理のない様に配慮してくれるかもしれないが、それは一面、差別という危険性も持っているのでどちらを選ぶのか慎重にならざるを得まい。
進学に際しては担任の先生にてんかんという病気を話しておいたほうが良いとわたしは思う。そうすることによって体育や水泳などに際して便宜を図ってくれるかもしれない。
新しい友人や隣近所の人には別に病名を話す必要はない。下手をすると差別される可能性がある。しかし発作を何回も起こしていると、いずれ病名は自然に分かられてしまうかもしれない。
就職するときはどうだろうか。病気のことを話すと、就職の門戸を狭めてしまう可能性がある。そして就職しても、職場や勤務体制(夜勤が出来ないなど)で、不利益になってしまうかもしれない。隠しおおせる自信があれば少なくとも最初のうちは隠したほうが賢明だろう。職務がきちんと出来ておれば、病気が「ばれた」からといって首になることはない。
お見合いの場面で最初から病名をいう人はあるまい。しかし、話がまとまり、いざ結婚ということになれば、その前に結婚相手にだけは話したほうがよいと私は思う。あとで病名がばれてしまい、「詐欺だ」といわれ、夫婦間に軋みが出来た事例を私は経験している。
しかしこっそりと薬を飲み続け、最後まで病名を隠している事例や、何年かあとに偶然発作が出現して、その時点で病気が発病したとしてうまく言い逃れたケースもある。しかしなにかうそをついているようで、いつも後ろめたい気分が残る。
私は、基本的には「必要な時には勇気を持って病名を知らせたほうがよい」というように常日頃考えている。
「成人期てんかんの特色」/大沼 悌一
(この記事は波の会東京都支部のご許可を得て掲載しているものです。無断転載はお断りいたします。)