90.てんかん最前線:点頭てんかんとウエスト症候群(日本てんかん学会ガイドライン)(2010年9月号)

日本てんかん学会は小児の難治てんかんの代表的な疾患である点頭てんかんとウエスト症候群の診断・治療についてガイドラインを作成した。

本疾患は乳幼児に始まる難治てんかんの代表的な疾患である。発作もほとんど毎日頻回に起こり、将来知的発達障害なども伴うことが多い最も困難なてんかん症候群である。

なぜこの疾患がてんかん学会のガイドラインとして取り上げられたか。その理由はいくつかあるが、そのひとつに診断基準があいまいな場合が少なくないからである。従来日本においてはかつて「乳児痙屈発作」と呼ばれてきた。それが「点等てんかん」と呼ばれるようになり、さらに「ウエスト症候群」と変わってきた経緯があり、その中に若干の混乱が生じたのである。

この疾患の発作は、ビクッと体を硬直させる一瞬の発作で、その頻度も毎日10数回以上起こり、かつ短時間の間に連続発作が起こることが多い。そのうちに次第に知的発達障害も伴うようになる。 成長するとこれまた難治てんかんの代表的な疾患である「レンノックス症候群」に移行する場合が多い。ウエスト症候群の脳波は特徴的な「ヒップスアリスミア」と呼ばれる異常波を呈する。これはリズムが全くない混乱した脳波で、発作の波と背景脳波が無秩序に出現する脳波パターンである。この脳波特徴と上記の発作症状が同時に見られるのが「ウエスト症候群」である。

これよりももっと広い範囲で使われるのが「点頭てんかん」である。発作症状は同じであっても「ヒップスアリスミア」という特徴的な脳波が見られない場合などである。乳児痙屈発作は発作症状の表現であり、てんかん症候群とは違うので今は用いられなくなった。

この疾患でやはり重要なのは早期診断、早期治療である。ACTHがまず第1選択薬である。そして副作用を軽減するために、可能な限り少量、短期間の投与が推奨される。

その治療は出来るだけ早く使用すべきである。ACTH治療中は副作用をモニターし、重篤な副作用が出現した場合は、ACTHを中止するとある。

またガイドラインでは「早期治療によって発作も抑制され、知的障害が合併することも少なくなった」と述べている。潜因性症例102例で6年以上追跡した研究では、50%で発達正常であり62%で発作が消失し32%で脳波が正常であったという。ACTH療法の方が知的予後ならびに発作予後が良く、かつ発症1ヶ月以内にACTH療法を開始した方が精神発達が良かったという。Kivityらは大量合成ACTH療法後経口プレドニゾンで治療し6年以上追跡した結果、発症1ヶ月以内に治療開始した群では100%正常知能であったが、1ヶ月以後に治療した群では40%のみが正常知能であったという。

早期治療によって、ウエスト症候群という難治てんかんは、もう難治ではなくなったといえるかもしれない。

「成人期てんかんの特色」大沼 悌一

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