前回はてんかんの分類について述べた。(1)全般てんかんか、部分てんかんかという基準と、(2)特発性てんかんか、症候性てんかんかという二つの分類基準がある。この基準を適応すれば、特発性で全般てんかん、特発性で部分てんかん、症候性で全般てんかんと、症候性で部分てんかんの四つのてんかん群が出来上がる。この4分類はそれぞれ直りやすさが大いに違うので、自分はどのタイプに属するか知っておく必要がある。
特発性は脳に障害(キズ)がないので、知的障害などはない。発作以外は正常である。大変治りやすい。一方症候性は脳に障害(キズ)がありそれが原因となって発作を起こす。発作を起こす傷害(キズ)はさまざまでCTやMRIなどで写らないほど小さいものや、あるいは大きな傷害(キズ)があり、したがって知的障害や脳性まひを伴うことがある。特発性に比べると治りにくい。
全般てんかんか部分てんかんかの判断は、発作の様相や脳波所見を参考にする。部分てんかんは発作が体の一部分から始まる。そして脳波にはそれに対応する脳のある部分に発作波が見られることが多い。
もっともこの4分類は必ずしも明確でない場合がある。全般てんかんと思っていたのが、経過を追っていくにつれて部分てんかんと分かってきた例や、特発性と考えたが、経過を追っていくうちに症候性と考えたほうがいいと判断される場合がある。あるいはこの4分類のどこに当たるのか分からない場合もある。これらは分類不能てんかんなどと呼ばれる。
今回は特発性部分てんかんについて述べる。これはすべて小児のてんかんであり、最も治りやすいてんかんに属する。発病年齢は4,5歳から10歳ぐらいまでである。多くは夜間睡眠中に痙攣発作を起こす。部分発作なので、痙攣発作は体の一部(たとえば右または左の顔や手)からは始まることが多い。脳波に頻回な発作波が出る。発作波は特に睡眠時に限って出現し、その場所は中心・側頭部に限られている。睡眠時に限って出現するので、睡眠脳波をとらなければ異常波を捕まえることはできない。てんかん焦点が側頭・中心部に限局しているので、「側頭・中心部に焦点を有する小児良性部分てんかん」という名前がついている。あるいは後頭部に限局している場合もある。これを「後頭部に焦点を有する小児良性部分てんかん」という。発作の頻度は多くても年に数回以内である。
特発性なので、CT,MRIなどでも異常はない。脳障害がないので、知的障害や脳性小児麻痺などもない。学校の成績は多くは正常である。
予後は一般によい。小学校を卒業するころには異常脳波も少なくなり、抗てんかん薬もやめられる場合が多い。
この種のてんかんは発作を起こしやすい体質を親から受け継いでいると考えられる。その証拠には、発作がない同胞にも時に同じような脳波異常が見出されることがあるからである。
さてあなたの子供さんはこの種のてんかんではありませんか?
「成人期てんかんの特色」大沼 悌一
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