てんかんはもちろんすべてが遺伝とはいえない。しかし中には同一家族内に二人以上のてんかん患者がおり、遺伝が関与していると思われるケースもある。遺伝が関与するケースはきわめて特徴があるので詳しく診察すると比較的容易に診断がつく。そのひとつに「特発性てんかん」をあげることが出来る。「特発性」というのは脳に器質的原因がなく、何か分からないが発作を起こしやすい傾向が生まれたときからすでにもっていたという意味でもある。それが何かはまだ解明されていないが、すでに一部の「特発性てんかん」では遺伝子の座が解明されているのもある。「特発性てんかん」の特徴のひとつに年齢依存性がある。年齢依存性というのは、なにやら難しいそうな単語だが、実は極めて単純である。「ある年代になって初めて発作が出現し、その年代を超えると発作が消滅する」という意味である。したがってきわめて治りやすいてんかんといえる。
乳児期に発症する、「常染色体優勢夜間前頭葉てんかん」という病気がある。夜間睡眠中に痙攣発作をおこし、親も乳児期に同じ発作があったというばあいである。その遺伝子の座は20番染色体の短腕13.2-13.3という部位とおよび1番染色体長腕21の位置にあると分かってきた。「良性家族性新生児けいれん」もまた20番染色体短腕13.34および8番染色体単腕24の部位にある。「全般てんかん熱性けいれんプラス」といわれる幼児のてんかんがあるがこれは19番染色体短腕の13.1および2番染色体短腕の24という場所および、5番染色体短腕の34の場所にあると解明されている。
「特発性てんかん」の中には、4-5歳になると発症し12歳ごろには消滅する「小児良性部分てんかん」が出てくる。夜間睡眠中に痙攣発作を起き、目を覚ましているときには発作を起こさないという特徴がある。
その後小児・思春期に発症する「欠神てんかん」や「若年ミオクロニーてんかん」が出てくるが、後者では遺伝子の座が2番染色体短腕22-23、および6番染色体長腕12-11にあると分かった。15-20歳代で発症する「覚醒時大発作てんかん」があるが、いずれもなおりやすいてんかん群である。
これらはその年代を超えると発作が自然消滅するので極めて直りやすいてんかん群に入る。しかし直りやすいけれども、患者が成人して子供を生むと、その子がまたやや比較的高い確率で同じ発作を起こす可能性がある。
しかしまたその発作も親と同様に直りやすいのである。「特発性てんかん」は直りやすいがその子供におなじてんかんが出る可能性がある。一方「症候性てんかん」は遺伝とは関係がないので子供にてんかんがうまれる可能性は無いが、比較的治りにくいのが欠点である。
さてあなた方が関係するてんかんという病気はどちらのグループに入るのでしょうか。
「成人期てんかんの特色」/大沼 悌一
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