原因が不明で治療方法が確立されていない、治りにくく長期の治療・療養が必要な疾患がある。患者・家族には大きな負担がかかるので、これを国が難病と指定した。
昭和27年に発生したスモン病をきっかけとして審議され、昭和47年にようやく難病対策要綱が策定された。難病は1)原因不明、治療方針未確定、かつ後遺症を残す恐れが少なくなく、2)経過が慢性にわたり、単に経済的な問題のみならず介護などに人手を要するため家族の負担が重く精神的にも負担が大きい疾患と定義された。当初56疾患が指定されたが、その後疾患が増え、平成2年まで333疾患が指定された。それぞれの病気の診断基準と重症度分類が決められており、難病指定医が診断書(臨床個人調査票)を記入し、都道府県が決定することになっている。医療費も自己負担割合が2割で、かつ負担上限額が設定されておるので、それを超える負担はなくなる。通常の国保・健保の3割より安い。
てんかんを主症状とする疾患もこの指定難病に含まれており22のてんかんが「てんかんの指定難病ガイド」に載っている(厚生労働省科学研究費補助金 難治性疾患政策研究事業 「希少難治性てんかんのレジストリ構築による総合的研究」班。我々のクリニックで比較的よく見かけるのは「海馬硬化を伴う内側側頭葉てんかん」や「進行性ミオクローヌスてんかん(BAFME)」などがあり、参考まで症例を載せる。
症例1 海馬硬化を持つ内側側頭葉てんかん 56歳女。
20歳時に発病。(1)弱い発作:一瞬ボーとしてわからなくなる。(2)さらに訳の分からないことを口走る。(3)さらに歌ったりおどったり、飛び跳ねたりする。発作は難治でほぼすべての抗てんかん薬を試みたが改善しなかった。MRIで右側頭葉全体の軽度萎縮、PETで右側頭部外側皮質の軽度代謝低下があり、さらに左および右の側頭葉電極留置術を行い、右側から最初にてんかん放電が始まることを確認し、外科的に右側頭葉前部、右扁桃核切除をおこなった。しかし術後発作は再発し長期的の改善は得られなかった。左側頭葉もすでに焦点性を獲得していたために再発したと考えられた。
症例2 進行性ミオクローヌスてんかん(BAFME) :現在87歳女。
41歳より手の震顫が出現した。人前で字を書く時など緊張した時など著しい。54歳時まぶしい光を見た瞬間、手の震えがひどくなり、続けて大きなけいれん発作があった。その後長期間にわたって手の震えがあり、次第に増悪し、ふらつきや歩行困難も出現した。65歳で転倒による腰・胸椎圧迫骨折、右大腿骨頭骨折が発生した。
この疾患は遺伝性があり、3世代にわたり15名の発病がある。特徴は光に過敏で、震えがゆっくりと増悪する。脳波で光過敏性あり、誘発電位(痛覚刺激で脳に巨大反応)が出るので診断が確定する。
指定難治による医療費負担は自立支援法や障害年金とも関係するので詳しくは最寄りの都道府県の窓口に相談してください。
「成人期てんかんの特色」大沼 悌一
(この記事は波の会東京都支部のご許可を得て掲載しているものです。無断転載はお断りいたします。)