今までさまざまな抗てんかん薬の副作用について述べてきた。フェノバルビタール(フェノバール)の副作用は眠気である。うっかりすると一日中寝てばかりいるか、まれに昏睡状態になったりすることもある。フェニトイン(アレビアチン、ヒダントール)の怖い副作用はふらつき(小脳失調症)である。この症状が長引くと元に戻らないこともあるから注意が必要である。カルバマゼピン(テグレトール)の怖い副作用は発疹である。発熱、肝障害なども伴い重篤に至る場合がある。バルプロ酸(デパケン、バレリン、セレニカ)は肝障害をきたし、高アンモニア血症をきたすことがある。ゾニサミド(エクセグラン)は意欲の減退、動作緩慢、不機嫌など厄介な副作用をもたらすことがある。エトサクシミド(エピレオ)は稀ではあるが白血球減少や再生不良性貧血をもたらすことがある。クロナゼパム(リボトリール、ランドセン)は使い方が難しい。発作を悪化させることもある。
このように薬には必ず副作用がつきものである。もちろんこれらを服用した全員に副作用が出るわけではない。10万人に数人しか出ない副作用もあり、これは無視してもいいが、しかしいったん出れば重篤になる症状でもある。眠気などの副作用は最も頻回に見られ、服用患者の2-3割に出る場合もある。薬の量が多くなるとその頻度は高くなり、症状もひどくなる。
治療の原則は副作用が出現しない範囲で完全に発作を抑制することである。そして個々の症例に最も適切な合った薬を見つけることである。発作の型、てんかん症候群の診断がわかれば、ある程度効果が期待される薬を見当つけることができる。しかし本当にそれがいいかどうかは、使ってみなければわからないのである。良かれと思って処方した薬で思わぬ副作用が生ずることもある。したがって最もいい薬を見つけるのに時間がかかる場合がある。合った薬を見つける作業は、患者自身が副作用と思われる症状を正確に述べ、医師は患者が述べる症状に注意深く耳を傾け、副作用かどうか慎重に判断する。副作用と考えたら減量あるいは中止、副作用でないと判断したら、維持あるいはさらに増量、副作用かどうかわからないときにはよく相談する必要がある。したがってこれはいわば医師と患者の共同作業ともいえる。
思わぬ副作用が出て大変な目にあった人に対して、医薬品等による副作用救済制度というのができたのをご存知ですか。薬害エイズ、輸血による肝炎などは大きく取り上げられ、今でも新聞紙上をにぎわしているが、これらの被害者を救済する制度でもある。それには次のように記載されている。
「医薬品は、人の健康の保持増進に欠かせないものですが、その使用に当たって万全の注意を払ってもなお副作用の発生を防止できない場合があります。医薬品を適正に使用したにもかかわらず副作用による健康被害(入院を必要とする程度の疾病または障害、死亡)が発生した場合に、医療費、医療手当、障害年金、障害児養育年金、遺族年金、遺族一時年金または葬祭料の各種給付を行い、これにより健康被害の救済を図ろうとするのがこの救済制度です」。
これは平成16年4月以降の使用された生物由来製品にも適応される。
疑問があれば独立行政法人 医薬品医療総合機構が相談に乗ってくれます。
わたしもしばしばこれを利用している。
「成人期てんかんの特色」/大沼 悌一
(この記事は波の会東京都支部のご許可を得て掲載しているものです。無断転載はお断りいたします。)