新型コロナワクチン接種後のてんかん発作の実際について

新型コロナ

日本での新型コロナワクチン接種状況は、2021年12月6日現在、1回接種が終わった人は79.4%、2回接種が終わった人は77.7%です。高い数字ではありますが、最近伸び率は減少してきて、ここから先は急な上昇は見込めないと思われます。そんななか、3回目のブースター接種が始まったところですね。

さてこれまで世界的に、新型コロナワクチンをてんかん患者さんが打つことに、特に支障はないと言われています。しかし実際のところどうなのか、ということはまだあまりデータが出ていません。心配に思われている方もいらっしゃると思います。

当院に通院されている多くの患者様が、新型コロナワクチンを打ちました。そこで、ワクチンを打った結果、ワクチン接種に関連しててんかん発作が出たのは実際のところどのくらいなのか、どんな発作が出たのか、ということを、現時点でまとめておこうと思います。ご参考になれば幸いです。

当院で加藤自身が担当しているてんかんの患者様のうち、新型コロナワクチンの接種が2回終わり、その結果を確認できた方が、12月7日現在、累計で1021名いらっしゃいます。年齢は10代から高齢まで広範囲にわたります。またワクチン接種時には多くの方に、熱が出始めたら早めに解熱鎮痛剤を使うように指示しておきました。

この1021名のうち、1回目あるいは2回目のワクチンを打った当日から5日後までに、なんらかのてんかん発作が起こった方は、合計15人でした。ただしこの15人のうち、普段から発作が多くて、毎日複数回~週に複数回起こっている方が5人いらっしゃいました。この5人に関しては、普段の発作が普段通りの頻度で起こっただけで、ワクチン接種に関連して発作が増えたわけではないので除外しますと、10人です。

すなわち新型コロナワクチンの接種に関連して発作が起こった方は、10/1021=0.98%、ほぼ1%となります。この結果を全体としてみると、やはり新型コロナワクチンがてんかん自体には大きな影響を与えないとみて良いと考えます。

以下、ワクチン接種と関連して発作が起こった10人について詳しく見てみましょう。

まず回数との関連では、1回目のワクチン接種後の発作は3人でした。この3人とも、その後2回目の接種を受けて、発作はありませんでした。2回目のワクチン接種後の発作は7人で、1回目より多かったです。

次に発作に関してです。この10人の方々の普段の発作症状は、
・強直間代発作(全身のけいれん)が4人、
・焦点意識減損発作(意識を失ってぼんやりする)が5人、
・焦点意識保持発作(発作中意識が保たれている)が1人でした。

また、この10人の元々の発作頻度は、
・週1回以上が1人、
・週1回未満~月1回以上が3人、
・月1回未満~年1回以上が4人、
・年1回未満が2人でした。

ワクチン接種後に起こった発作症状は、10人全員が、その方に普段見られているのと同じでした。発作の回数は、10人中8人は1回で、1人は強直間代発作が2回、1人は焦点意識減損発作が短時間の間に数回出現しました。

そして10人全員が、その後元通り、元気に生活していらっしゃいます。

発作が出現したタイミングは、
・接種の当日が4人、
・翌日が4人、
・5日後に2人、でした。

ワクチン接種により、38度台の発熱が10人中3人に見られました。(残りの7人のうち37度台前半の微熱の方が2人で、5人には発熱は全くありませんでした。)ワクチンの副作用として比較的高率に発熱が見られることを考慮すると、発熱と発作の関連はそれほど強くはないようですが、やはり発熱には注意して、早めに解熱剤などを使うと良いだろう、と思います。

以上まとめますと、新型コロナワクチン接種後5日目までに、ほぼ1%の方にワクチンによる影響と考えられるてんかん発作が見られました。皆様がその後元気に過ごされています

(加藤 昌明)

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