135.発作の裏にある脳の病気:その24 肝心(肝腎)な話(2014年6月号)

「肝心な話」という言葉がある。「肝腎な話」ともいう。肝臓と心臓、あるいは肝臓や腎臓は人体にとって極めて重要な部位であり、非常に大切なこと、非常に重要なことを意味する。「肝心な事を忘れていた」などというように使う。このような大切な肝臓や腎臓の病気は「代謝性疾患」の一つで脳もまたその影響を受ける。一般に肝臓は沈黙の臓器といわれ、自覚症状がないことが多いが、進行すると全身倦怠感・食欲不振・黄疸などの症状が現れる。そのまま放置すると、肝炎・肝硬変・肝臓がんなどに進行する恐れがある。

抗てんかん薬を含めた多くの薬は、肝臓で分解され体外に排泄されるので、肝臓が活発に働く。時には働き過ぎで肝機能に異常がでることがある。アルコールは肝臓に負担をかける代表的な物質であり、毎日飲んでいると肝臓に大きな負担がかかる。

肝機能がどの程度障害されているかを判断する指標にγ-GTP(正常値(70 IU/l以下)、GOT(AST)(正常値10-40 IU/l)、GPT(ALT)(正常値5-10 IU/l)といった指標があり、抗てんかん薬を飲んでいる人は、定期的にこの値を調べる必要がる。γ-GTPは最も敏感な指標で多くのてんかん患者さんが、異常値を示すことがあるが、多くはGOT(AST)、GPT(ALT)が正常であり、この限りではあまり心配はない。肝臓に多少の負担が掛かっているけど、肝機能はおおむね正常だからあまり心配はないと説明する。GOT(AST)、GPT(ALT)まで異常が広がれば飲んでいる薬を減量した方がよい。

肝性脳症という言葉がある。最も重篤な肝臓の病気であり、血中アンモニア(正常値30-86mg/dl)が異常に増加して、意識障害を引き起こす。抗てんかん薬の副作用としては、これほど重症になる人は少なく、このような所見が出たらより重篤なビールス性肝炎、肝硬変、肝がんなどを考えた方がよい。

尿毒症という言葉がある。腎機能が著しく低下して、さまざまな老廃物や尿毒物が体内にたまり、心臓、消化器、脳神経などに異常をきたす。

尿毒症を放置しておくと、数日から数ヶ月で死に至るので、人工透析が必要になる。腎機能はBUN(残余窒素,正常値8-21mg/dl)、クレアチニン(正常値0.6-1.04mg/dl)などで測る。

最近経験した症例を示す。

症例1. 50才男、慢性腎機能障害があり、BUNが141㎎と正常上限をはるかに超え、クレアチニンも10.0mg/dlと正常の10倍まで上がった。意識障害とけいれん発作が生じた。

症例2. 55歳男、C-型肝炎による肝硬変で肝性脳症に陥り、けいれん発作が生じた。

症例3. 64歳男、 肝硬変から肝癌移行し、血中アンモニア214mg/dlと正常の2-3倍に上昇し 意識障害、見当識障害、異常行動を呈した。

「肝腎はやはり大切な臓器」であり、常日頃薬を人でいる人は肝腎の機能を定期的にチェックする必要がある。

「成人期てんかんの特色」大沼 悌一

(この記事は波の会東京都支部のご許可を得て掲載しているものです。無断転載はお断りいたします。)

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