14.てんかんに合併する心の問題:強迫性障害(2004年5月号)

前回はてんかんと「不安とパニック障害」について述べました。「漠然とした不安」がいつも付きまとっている「全般性不安障害」や突然何の誘因もなく発作的に不安が強まる、パニック障害について述べました。パニック発作の出現頻度はてんかんの発症率の3倍も高く、動悸、めまい、冷や汗、息苦しさ、呼吸困難、死の恐怖などが体の内部からこみ上げてきて、いたたまれなくなる発作です。最近はよい薬が市販されるようになっており、治療効果も上がってきています。またパニック発作とてんかん発作の症状がかなり似ているので鑑別も必要になります。パニック障害では脳波の異常は出現しませんが、てんかん患者の中でもパニック障害を併せ持つ方もおり、その際には脳波の異常もありうるので、精神科医でなおかつてんかん専門医への相談が必要になってくるでしょう。

今回は強迫性障害について述べてみましょう。

強迫性障害とは本人の意志に反して、繰り返し何回も出現するある種の「考え」あるいは「行動」で、たとえば「わいせつな考え」「子供を殺す衝動を抑えられなくなるかもしれないという考え」が際限もなく何回も頭に浮かぶ場合などである。

また過度な「確認癖」のため何回も戸締りを確認するとか、異常な「整理整頓」や「潔癖性」のため「長時間何回も手洗いする」とか「部屋中のごみや髪の毛を捜して歩く」、「自分のものを絶対に他人に触れさせない」などがあり、そのために毎日長時間そのことに時間を費やし、本人はもとより家族の日常の生活にも大きな支障をきたすことがあるようです。本人はそれが無意味で、馬鹿げたことと自覚しており、やめようと努力するのだが、努力するとかえってひどくなり、そのため精神的に苦痛を覚えるものである。

これに似たのに知的障害者や自閉症児の「こだわり」や「常同行為」「自傷行為」などがある。「長時間の入浴」、「トイレの占拠」、「特定の紙遊び」、「体ゆすり」、「頭ゆすり」、「抜毛」、「頭叩き」、「体を引っ掻く」、「手を噛む」などの行為である。知的障害者では、これらの行為が無意味であることが分からず、やめようとする意思もないことが多いので、強迫性障害とはいえないが繰り返す不自然で、不必要な行動で本人および周囲の人に多大な迷惑をかける点では違いがない。

てんかん患者では執着的で几帳面な人も少なくはなく、これら強迫性障害を併せ持つ患者さんも多い。また知的障害者や自閉症児で、「常同行為」「自傷行為」もあり、かつてんかん発作を併せ持つ人も多い。これらの患者さんの中にはその程度があまりにもひどく、たとえば一日中トイレと風呂場を占領され、家族は隣家のトイレを借りなければならないような場合もある。

これらの患者さんを支えるのは、家族だけでは到底無理で、周りからの援助や地域での組織的な援助・ケアが必要になってくる。

最近新しい抗精神薬であるSSRI,SNRIなどが開発、市販されており中には上記の「強迫性障害」や「常同行為」「自傷行為」にも有効であることが報告されているので、期待が持てる。

「成人期てんかんの特色」/大沼 悌一

(この記事は波の会東京都支部のご許可を得て掲載しているものです。無断転載はお断りいたします。)

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