94.てんかん最前線:心因性非てんかん性発作(いわゆる偽発作)に関する診断・治療ガイドライン –日本てんかん学会編– (2011年1月号)

日本てんかん学会はてんかん発作に似てはいるが真のてんかん発作ではないいわゆる「偽発作」についてガイドラインを作成した。まずこの発作を「心因性非てんかん性発作(PNES)と名付けた。これはストレスなどの心因(精神的要因)で、意識消失、けいれんなどの発作がおこり、しばしばてんかん発作と間違われやすい。「偽発作」、「疑似発作」、「ヒステリー発作」ともいわれてきたが「にせもの」、「わざとやっている」などと否定的な意味にとられやすくこの用語は適切ではない。

ガイドラインにはおおむね次のことがらが述べられている。

1.この心因性非てんかん発作は頻度が高く、てんかん専門施設では初診患者の1―2割を占める。

2.時に診断・治療が難しく、とかく医師からは敬遠されやすい。そのため積極的に引き受け手がない無人の領域になりやすい。

3.いったんこの病名がつけられると「わざといやっている」「にせもの」という印象を与えやすく、患者は病気を受け入れるのに抵抗し、したがって医療的ケアが難しくなることがありえる。

4.この診断は「てんかんではない」という除外基準の上に立っており、てんかんではなくとも、たとえば低血圧あるいは心疾患による失神発作や他の脳器質的疾患をも除外しなければならず、診断にはかなり時間がかかることもある。

5.時にはてんかん発作と心因性非てんかん性発作の両者をもつこともある。知的障害や難治てんかんではそのような場合が比較的多い。

6.診断には詳細な病歴の聴取が重要であり、複数回のビデオ脳波同時記録が必要となることもある。

7.カウンセリングや抗てんかん薬の減量も必要になってくる。

8.この疾患で比較的多くみられる症状は「首の規則的・反復的な左右への横振り運動」、「規則的に反復する手や足の屈伸運動・間代用運動」、「散発的・断続的に長時間続く」、「目的性を持った自動症を示す記憶喪失発作」、「発作の最中に閉眼している場合」、「一見睡眠様に見える発作」などがあげられる。

9.家族・本人の心理的負担を軽減し社会的・心理的な環境整備が必要であろう。治療が長期に及んでいる場合などでは「てんかんであることが人生設計のアイデンティティ」であるので、それを否定することは混乱を引き起こすだけで、治療的効果はほとんどない。根気強い精神療法と治療スタッフとの確かな関係性の確立が必要である。

以上「心因性非てんかん性発作」の診断・治療ガイドラインについて述べた。この疾患の対応には時に時間と忍耐が必要だが、しかしてんかん診療には避けて通れない。

「成人期てんかんの特色」大沼 悌一

(この記事は波の会東京都支部のご許可を得て掲載しているものです。無断転載はお断りいたします。)

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