99.てんかん最前線:高齢者のてんかんに対する診断・治療ガイドライン –日本てんかん学会の取り組み–  (2011年6月号)

最近高齢者のてんかん患者に遭遇することが多くなってきた。もち論若年発症のてんかん患者が時と共に高齢化したという例もあるが、高齢(65歳以上)になって初めててんかん発作を発症した例も多い。

高齢者の発作症状は通常非けいれん性で軽微で多彩であり、意識障害、失語、もうろう状態などが主である。大発作や全身のけいれんがあれば迷わずてんかんと診断できるだろうが、そのような大きな発作を起こす場合は比較的少なく、短時間意識が曇るだけで終わる場合が多い。この間何かおかしなことをしゃべったり、無意味に動きまわったりすることがある。いつも行き慣れた場所が分らなくなり途中で戻ったりすることもある。本人がおかしな発作に気づいていることも多いが、発作に全く気付いていない場合もある。妻が「今おかしくなったでしょ」と指摘すると「そんなことはない」と否定するかあるいは「今ちょっと考え事していたんだ」などと言い訳する。妻が「病院に行こう」と無理にすすめると最後には怒りだす。そのため発見が遅くなり治療が遅れることがある。

このような発作が頻回に起こるとそのうち「物忘れ」が目立つようになることがある。同じことを何回も聞いたり、重要なことを忘れたりする。また時には頻回な発作は過去の記憶を消しさることもある。過去に皆と一緒に外国旅行に行ったこと、親の葬儀に参加したことなど思い出せないことがあり認知症と間違われたりする。

高齢者初発てんかんの原因は若者とは異なり、脳血管障害(30-40%)が最も多く、次いで頭部外傷、アルツハイマー病、脳腫瘍などがある。つまり脳になんらかのキズがある場合が多い。したがって脳のCT,MRI検査などで病変が見つかる場合が多いが3分の1は原因不明である。脳に傷がなくて起こる特発性てんかんは若年者には多いが高齢者にはほとんどない。

治療に関してはアメリカのエキスパートオピニオン(2005)によるとラモトリギン(ラミクタール)、レベチラセタム(イーケプラ)、ガバペンチン(ガバペン)、カルバマゼピン(テグレトール)の順であった。私の経験では特にカルバマゼピンが有効である。しかも少量で発作が完全に止まっている例が多いので私はこれを第1選択薬にしている。これで止まらなければ躊躇なくレベエチラセタム(イーケプラ)を使う。発作が治れば物忘れも改善する。しかし一旦失った記憶は戻らない。

なお高齢者には心血管障害(失神発作)、脳血管性障害(一過性脳虚血)、片頭痛、薬物中毒(アルコール離脱)、感染症(急性脳症、慢性脳症)、代謝疾患(低血糖、電解質異常)睡眠障害(レム睡眠異常、夢遊病)など合併することがあるので鑑別が必要である。

「成人期てんかんの特色」大沼 悌一

(この記事は波の会東京都支部のご許可を得て掲載しているものです。無断転載はお断りいたします。)

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