163 どの抗てんかん薬が最も効果的であるのか。――新薬の使い方。多剤・多量併用療法に陥らないように(2017年6月号)――

最近新しい抗てんかん薬が急速に増えてきた。ここ数年前に発売されたガパペンチン、トピラマート、ラモトリギン、イーケプラ、ルフィナマイドなどはもう古くなった。昨年発売されてまだ1年たっていない超新薬はペランパネル(フィコンパ)、ラコサミド(ビムパット)がある。これらを合計するとほぼ24個の抗てんかん薬が現在使用可能である。これは大変ありがたいことで、従来の薬で治らなかった発作も新しい薬で治る可能性が出てきた。

これらの抗てんかん薬は、てんかんのタイプによって一応使い分けができている。例えば従来なら特発性全般てんかんではパルプロ酸、側頭葉てんかんではカルバマゼピンといった薬が推奨されてきた。しかし最近では次々と新しい薬が追加投薬され、その結果好ましくない多剤・多量併用に落ちる患者が増えてきている。

てんかん治療に経験のある医師はてんかんのタイプを見てどの薬剤を、最初に使うべきか、そしてそれが無効なら次にどの薬を使うかという順序を立てることができる。しかしそれがうまくいくかは、使ってみないと分からない。第1選択薬がうまく功を奏して発作が止まるかもしれないが、よい効果が得られず、好ましくない副作用が出たりすることがある。ある薬が無効だからといって、その薬を減量すると、逆に発作が増えて薬の減量が困難になることもある。薬を入れるのは簡単だが、減量・中止は難しい。かようにして薬の種類・量が多くなり、多剤・多量併用という好ましくない状況に追い込まれる場合がある。薬を減量して発作が増えると、本人・家族も薬の減量に抵抗を示し、これが多剤併用の原因ともなりうる。

例を示そう。40歳台の男、数年前に急性脳炎にかかり、脳炎は改善したものの後遺症として、意識を失うのみの軽い複雑部分発作と時に倒れるけいれん発作が週数回起こるようになった。私の所に来た時には6種類の抗てんかん薬が入っており、終日眠気がひどく、無気力な状態だった。これを何度か失敗しながら3種類まで減量して、どうにか元気になった。発作は相変わらず難治である。

症例2 50歳女 5歳時不明な脳炎にかかり、その後意識はあるが動けなくなる軽い発作が週数回、さらに意識消失、ときに倒れる発作を残した。駅でホームから転落したこともある。抗てんかん薬も多剤・多量併用となり、その結果、聞き分けができなくなり、理解力が低下し、買い物などの日常性活にも支障きたすようになった。彼女の反対を押し切って薬剤を整理すると比較的すっきりして、聞き分けのある前の彼女に戻った。発作は変わらない。

教訓1.薬剤の追加は薬剤の減量後に行う。
教訓2.減量直後の発作は偶然の可能性がある。ゆっくりと減量は続けてよい。
教訓3.本人・家族は減量に不安を示すことがある。多剤多量の弊害を説明すれば納得がえられることが多い。

「成人期てんかんの特色」大沼 悌一

(この記事は波の会東京都支部のご許可を得て掲載しているものです。無断転載はお断りいたします。)

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