166 最近発売された新しい抗てんかん薬――ペランパネル(フィコンパ)、ラコサミド(ビムパット)に期待する――(2017年12月号)

ここ10年ほどの間に新しい抗てんかん薬(ガパペンチン、トピラマート、ラモトリギン、レベチラセタム)が次々と開発され多くの患者さんはその恩恵を受けてきた。これらの新薬についてはすでに述べた(85号-87号、 2010.4―6月号)。その後ここ1年の間にさらに新しい薬、ペランパネル(フィコンパ)、ラコサミド(ビムパット)が出るようになり、1年間の猶予期間が過ぎたので、長期処方が可能になった。発売開始後の1年間は、1回の診察で2週間処方という縛りがあったが、1年過ぎたのでこのしばりはとれた。その後たくさんの患者さんに使われるようになり、その効果も次第にわかってきた。ここに症例を提示して面白い薬であることを解説しよう。

ペランパネル(フィコンパ)が有効であった症例
42歳、女性  8歳ころから1分ぐらいの短い意識を失うだけの軽い発作が始まった。その頻度は月数回であり、この間意識がないまま歩き回ったり、まとまらない行動をとった。その後夜間睡眠中のけいれん発作も、月1回くわわり、発作も週2-3回と増え、難治な経過をたどった。ほとんどすべての抗てんかん薬を使ったが発作は改善しなかった。
30歳のごろから幻覚妄想状態が加わった。統合失調症様の精神症状である。「周りの人から狙われている」、「自分の悪口が聞こえてくる」などといって興奮して攻撃的になり、内鍵を閉めて夫を家に入れないとか、夜間抜け出して警察に保護されたこともあった。
このような精神症状が数か月以上続いたのでやむなく精神科の病院に入院した。
脳波では左側頭部に異常があり、精神症状を持つ側頭葉てんかんと診断された。
この患者にフィコンパ2㎎1錠、寝る前に投与したところ、月10回の発作が3回に減り、さらに4㎎に増量したところ、発作は全くなくなった。精神症状もない。フィコンパ4㎎の少量で劇的に効果があった症例である。なおこの薬剤の副作用として、肝、腎障害、眠気、易刺激性、不安等の精神症状があらわれることがあるが、本症例では副作用はなかった。

ラコサミド(ビムパット)が効果あった症例
 30歳 女性 中学の終わりごろ ボーとして意識が曇り、動きが止まる軽い発作が見られるようになった。時には尿失禁をきたす。発作は強い時には他人が気づくが、弱い場合は自分で気づくのみで、その頻度は月に数回で、時には1日5-10回連発することがあった。EEG:では両側前頭部に左右独立したspike頻回に見られ、側頭前頭葉てんかんと診断された。従来の抗てんかん薬はすべて無効で、外科治療も焦点がはっきりしないので無理、迷走神経刺激(VNS)が勧められた。

本症例にビムパット50㎎追加し、100mgで発作は半減し、200㎎で発作消失した。この薬は副作用として浮動性めまい、霧視、傾眠、頭痛、嘔吐、注意力集中力低下、EKG異常などがありうるが本症例では副作用は全くなく、効果は抜群であった。これまで止まらなかった難治な部分てんかん発作が新しい薬で完全に止まった例を提示した。これらの薬は今後難治てんかんの福音になると思われる。

「成人期てんかんの特色」大沼 悌一

(この記事は波の会東京都支部のご許可を得て掲載しているものです。無断転載はお断りいたします。)

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